03 : 白い炎  <創作倉庫  <TOP 
------- 03 : 白い炎

 揺らめき、しかし凛と激しく輝くそれは、光ではなく炎。
 それがこんな形で思い知らされる事になるなど、誰が思ったか。


「そいつらは拘置だ! 連れて行け!」
 どちらの目も見ずに告げる。
 一対の藍の瞳が向ける痛いほどの視線も、渦巻く胸中の慟哭も気付いていた。それでも敢えてそうした。それは今の状態では、どんな言葉も雛森の前では意味をなさないことを知っていたため。
 いや……知らざるを、得なかったため。
 拘置にしたのは、罰則としての冷静になる時を与える他に、市丸から――危険から遠ざける意味もあった。……そして、自分からも。
 護廷十三隊隊長としての判断としても、それが誤ったものだとは思わない。
 そんな個人の感情を挿める些事ではなかったこともある。少なくとも、その表面上は。
 だが、その抱く感情に動揺が全くなかったといえば、それは確実な嘘になる。
 ……雛森が、藍染を慕っていたのは知っていた。それは激しい焦がれるものではなく、憧れのようなものだとも。あいつのそれは、月の光のような、もしくはは木漏れ日のような静かで穏やかな想いだと、ずっとそう思っていた。
 ……あるいは、そう思い込もうとしていたのかもしれない。
 だが、あの時。藍染の死に逆上し、斬魄刀を躊躇いなく抜いたあの目に宿るのは、まごうことなき炎だった。
 喪失によって、そしてその怒りによって、明確に浮かび上がったその炎。その想いが如何程のものか、自分自身が身をもって知っていた。違える筈がない。
 それは単純な憧憬や敬愛などという、可愛らしいものではなかった。何者をも焦がすほどの、想い。
 しかし、たとえ雛森の抱くものがそれであったとしても、何一つ自分の思いは変わらない。……その、はずだった。
 だが、現実にこうしてそれを思い知らされた、今。
「……っ」
 一瞬にして、口内に広がったその鉄の味を、胸中に広がる苦い思いと共に飲み下す。
 道を誤らぬように、面を上げきつく前を見る。
 今、事態はどれ一つをとっても、一刻の予断も許されない状況だ。旅過の侵入、藍染殺害を初めとした隊長・副隊長格の相次ぐ負傷と欠員。個人の感情など、思い煩っている暇はない。
 不謹慎ではあったが、安堵もする。これほどの繁雑な事態がある限り、理性は決して感情を選びはしない。ただ守ると誓った、遠い昔から決めていた、その唯一にして絶対の思いを除いては。
 踏みしめる板張りの廊下が、ぎしりと鈍い音をたてる。痛みと共に認識するその現実の音を、今はただ真っ直ぐに見据えて。
 澱み緊迫する空気を肌で感じ取りながら、深く息を吸う。
「山本総隊長はいるか!?」
 思いを切り離すがごとく強く、それは叫ぶように。
 運ぶ足を止め、泰然と刻み込まれた『一』の紋様の門を睨み上げた。


 俺は、後どれほどの間、光でいられるだろうか。
 身勝手な想いで焦がすことのない、ただ照らすだけの、光に。






-------------------------------------------
 お題「白い炎」。散々悩んでこんなことに。101話(藍染隊長殺害発覚)の後の話。
 完全な「日→雛→藍」。実はここまではっきりこの形で書いた事はないなーとか思いまして。基本はこれなんですけどね……やっぱりここまでくっきりだとちょっと辛いかな;(書く自分が)
 まだ一人称だから救いはありますが……実際はどうなのか。事件のことにしろ、想いにしろ……未だに謎深まるばっかりで結構生殺し(苦笑)ただ、後者はそれぞれが向ける想いが、果てしなく深いのは察せますけどね。片思い多いよなBLEACH……

2004/09/13 初出  【出雲 奏司】

03 : 白い炎  <創作倉庫  <TOP