たわいない約束とか、別にそんなもののためだけに、この道を選んだわけじゃない。
だけどそれは、たとえ形だけであったとしても無視できるような問題でもなかった。ただ、それだけ。
------- Call my surname
「本当に入っちゃったんだね……」
大きな目を、それこそ零れ落ちそうなくらいに見開いた桃に、オレはいつもどおりの半眼で見上げた。
「悪いのかよ」
そういうと、とんでもないというのを全身で表現するように桃は両掌と首を横に振って見せた。どうでもいいが、そんなにすごい勢いで頭振ってたらそのうち髪ほどけるぞコイツ。
「ううんっ! そんなんじゃなくて、信じられないって言うかすごいなって」
「桃に入れてオレが入れねえワケねーだろ」
「なによそれー! ……でも、そうだね。シロちゃん頭良いもんね」
納得して頷くのはいいんだけどな。そこでなんでよしよしって頭撫でて、姉さんぶった行動をしたがるんだよ。
……しかもコイツ、この調子じゃ絶対あの約束覚えてねえな。
「……日番谷」
「へ?」
「『へ?』じゃねえだろ。真央霊術院入学できたら苗字で呼ぶってったのはどこの誰だよ」
まさか忘れてねえよな? と睨み上げると、桃は一瞬きょとんとして、すぐに「あっ」と口に手を当てた。あ、じゃねえよこの馬鹿。
「そっか……覚えててくれたんだ」
……忘れてた本人がそれを言うか?
呆れて嫌味の二、三でも言ってやろうかと思ったけど、何が嬉しいのかあんまりニコニコするんでこっちの毒気が抜かれてしまう。ああそうだよ。昔っからこういうヤツなんだ桃は。死神の学校に行ってたって、こういうとこはちっとも変わっちゃいねえ。 ホントに特進学級にいるのか? コイツ。
「じゃあ今日から『シロちゃん』じゃなくて、『日番谷くん』だね」
両手をぽんと胸の前で合わせて、心底嬉しそうに桃が告げる。
「入学おめでとうっ、シロちゃん!」
……コイツわざとなのか? それとも本気で間違えてるのか? どっちもありそうだから性質が悪いんだよホント。
ま、今日ぐらいはまだいいとするか。どーせコイツの事だから明日から呼び慣れるまで嫌になるぐらい訂正しなきゃなんねーし。
「あ、シロちゃん!」
「シロちゃんじゃねえっつってんだろ!」
……もういい。明日までなんて待つのがバカらしい。
それでも呼び交わす会話は少し懐かしくも慣れたもので、心地よいのだと認めてしまいたくなる。悔しいから絶対に言わねーけど。
――でもそれは迎院と共に訪れた、一つの確かな転機だった。
例のWJ20号の番外編(-17)の後日談みたいなもの。語るために適当に書いた日雛初作品。
この頃は、まさかここまで祭り上げる事になるとは夢にも思っていませんでした(いや本気で)勢いって怖い(笑)
2004/4/30 初出 【出雲 奏司】
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