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------- うたた寝



「日番谷くん。こんなところで寝ちゃってたら風邪ひくよ」
 目を閉じてごろりと横になってる見慣れた姿を見つけて、あたしはそっと声をかけた。
「ねえ、体も痛くなるし」
 軽くその肩を揺すると、うるさそうに、ころんと寝返りを打って。
 もしかして起きてるんじゃないかなって、今度は少しだけ怒った感じでいってみる。
「こんなところで寝てたら乱菊さんたち困るよ」
 あ、また眉間に皺寄せてる。寝てる時くらいやめればいいのに。
「ひーつーがーやーくん」
 寝返りを打った頭の後ろにしゃがみこんで、もう一度そう呼んでみても反応なし。
「……シロちゃん?」
 ……やっぱり起きない。
 寝た振りしてるときはこう呼んだら絶対に起きるはずなのに。
「本当に寝てる……?」
 声には少しだけ反応するけど、そろそろと寝顔を覗き込んでも、相変わらずの穏やかな寝息。
 いつもの日番谷くんなら、寝てたってこんなに近い人の気配に気付かないはずがないのに。
 その理由を考えて。
「疲れてるんだね……」
 寝返りを打った拍子に少しだけ乱れた髪を直すようにそっと撫で付けた。気性と同じ真っ直ぐな髪は、指を通してもするりと抜けて。当たり前なんだけど昔みたいに、葉っぱがついてたりなんかはしてなくて。すり抜ける髪の手応えのなさが、なんだか妙に寂しい。久しぶりに『シロちゃん』なんて呼んだせいかな。
「……そうだよね。日番谷くん、もう隊長さんだもんね」
 黒の死覇装の上に浮き上がるような白の羽織。その背に書かれた『十』の文字は、日番谷くんが背負うものの大きさを確かに示していて。
 自分の腕章と思わず見比べて、思わずぽつりともらしてしまう。
「あたしの方が置いてかれちゃうね」
 最初死神になろうとしたのは、あたしだったのに。いつの間にかあたしよりも後に来たはずの日番谷くんが隊長さんで。いつまでも小さいと思っていた背も、気がついたら目の高さが一緒になってて。
「……ちょっとさみしい、かな」
 ねえ、こんなふうに手が届くことがなくなっちゃうときも来るのかな? 
 ……それはなんだかとても淋しいことに思えて。
「あんまり遠くに行っちゃわないでね?」
 まだ少しだけあどけなさも残る寝顔に、こっそりあたしは呟いた。




 こま(C)のイラストをイメージに勝手に書いたもの。ツボ過ぎて大騒ぎした副産物(何て傍迷惑な) 元絵はこちらv

2004/06/08 初出  【出雲 奏司】

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