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 願いを掛けたのは、その想いが為。


------- 七夕


 年に一度織姫と彦星が出会うことが許されるというその日に、人々は短冊に願いを書き、紙の飾りとを笹の葉に飾り付けて願いを託す。
 人間界で行われるその風習は尸魂界にも普及しており、瀞霊廷に住む死神たちにとってもそれは例外ではない。

 隊室の前に延々と連なる笹は、既に見事に装飾がなされている。普段これといった娯楽のない瀞霊廷は、こういった行事になると異様なほどのノリを見せる。
 否応無しに巻き込まれるその勢いに、手の中にはいつの間にか細長い長方形の紙と筆。半ば無理矢理握らされたそれらに、日番谷は溜息をついた。
「……なんでこんなもんに付き合わなきゃならねーんだ」
 一人ぶつぶつと呟く日番谷に、松本が飾り付けを指揮する手を止め顔を上げる。
「隊長ー、願い事書けましたー?」
 まだだと答えると、急かす声が飾り付けをする者達の間から次々と上がる。
 付き合いきれるかと言いたいところだったが、隊長という立場上こんな事で他の者の気分を盛り下げると言うのも考えもので。観念して適当に願いらしきものでも書こうかと、思案した先。十番隊にはあるはずのない、見慣れたお団子が視界で揺れて、日番谷は目を瞬いた。
「雛森?」
 声をかけると、きょろきょろパタパタと忙しなく首と足を動かしていた雛森の体が、くるりと翻る。
「あ、見つけたっ! 日番谷くん」
 なにを急いでいたのか息を弾ませて近づく雛森に、日番谷は怪訝そうに顔を顰めて。
「なんだ? こんなところに」
「あのね、これ」
 大事そうに押抱いていたのは、薄色の短冊。
「笹に結ぼうと思ってたんだけどね、藍染隊長が直接渡した方がきっと届くからって」
 そう言って、差し出されるのを反射的にそのまま受け取る。
 手渡されたのは何の変哲もない短冊。そこに小さな字で、しかし雛森らしい丁寧な字でつづられたその願いは……

『日番谷くんが、一人で無茶をしませんように』

「言っても聞いてくれないのわかってるけど。いつも心配してるんだよ」
 そう言って微笑むのは、昔から変わらないいつも自分よりも他を気遣う雛森で。そういえば昔から雛森の書く願い事はいつも、『皆で元気に暮らせますように』とか『シロちゃんが怪我しませんように』とかそんなものばかりだった。変わっていないのは雛森なのか、心配ばかりかける日番谷自身か。
「年に一度だけ、織姫と彦星が会える日だから。この日くらい、届いてくれないかなって」
 いっつも無視されちゃうお願い。そう言って雛森は日番谷を覗き込む。
「……ったく。星に願うんじゃなかったら、七夕の意味ねーだろうが」
 僅かに日番谷は苦笑して。片手に握りっ放しだった筆と何も書いていない短冊を雛森に押し付ける。
「それやるからさっさと願い事書いてしまえ。さっきからあいつ等が書け書けってうるせえんだ」
 そう言って後ろ手に指すのはいまだ飾り付けを続ける隊員達。
「え? でもこれ日番谷くんの分の短冊じゃ……」
「どうせ同じだから関係ねえよ」
「え? え?」
 混乱する雛森を、今度は日番谷が急かす。
 
 
 雛森が日番谷の心配をするのなら、
 日番谷もまた、雛森の願いを叶える為に。
 願う思いは似て非なるもの。
 そしてその祈りはもまた、日常と似て非なるものに。







 ネタが本気で浮かばなくてえらいことに。意味不明ですがフィーリングでGo(待て)
 日番谷は、星に願いなんて掛けずに自分の手で叶えようとすると思いますが。だからこそ、仮に願うとするなら無邪気に信じる雛森に代わりに願い事させるかなと。
 まあ雛森の幸せがひいては自分の幸せでもあるという健気過ぎるうちのシロちゃんですから!(わぁ)

2004/07/07 初出  【出雲 奏司】

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